若い盆の籠の中

バスケットボールについていろいろをつぶやきます。

フィジカルからスキルへの変遷とそれがもたらしたもの

第一回は理論的な話に偏っていたので、今回はNBAで活躍するスター選手の実例も踏まえながら「優れている」ことに2つの要素があることを紹介したいと思います。

 

「フィジカル」

 

バスケットボールという競技は選手の身体能力が優劣に大きく影響を及ぼします。

バスケで重要視される身体能力について因数分解すると

「サイズ」

「幅」

「パワー」

「ボディバランス」

「スピード」

「バネ」

というように分解できます。

赤く色分けしたサイズと幅は、前回書いた内容にあるバスケは空間を支配し合う競技だということからなんとなく理解できると思います。

では、サイズと幅の違いとはどういうことでしょう?

ここでのサイズとは、身長、体重くらいの意味合いですが、幅とは具体的に腕と足の長さを指します。

現代のバスケットボールでは後者が比較的重要視されます。(後にこの理由について解説します)

残りの2色のところも同じように筋力から体幹、瞬発力から切り返しの速さといった風に必要とされる能力は微妙に変化しています。

それぞれの要素は連動していますが大まかにこの3つの方向性に分けることができ流でしょう。

そしてなぜ現代のバスケではなぜフィジカルに求められる要素が変わってきているのか、優れた選手になるためのもう一つの要素「スキル」が関わっています。

 

「スキル」

 

バスケにおけるスキルとは

「ハンドリング」

「シューティング」

「判断力」

細かく考えるとキリがないので大きく3つに分けました。

こちらには色分けしていない理由があります。

なぜならこれらの能力は全て身体に加えてボールとゴールリングの関係に関する能力だからです。

イメージ的にはフィジカルがパラメーター的なのに対してスキルは積み上げていくレイヤー的な感覚です。

 

細かく見ていきましょう。

「ハンドリング」

ボールを保持する能力のことをいい、主にドリブルやそれに伴うステップの取り方やパスを出す際の精度の高さを指します。この能力が高いとボールを保持するだけでなくフープの近くまで侵入して確率の高いダンクやレイアップを一人で演出することができます。

 

「シューティング」

玉入れ競技なので、根本的にシュートが上手い方が良いのですが成功確率に加えて様々な場所からショットを成功させられる能力のことです。

加えて様々なモーションから確率の高いショットを打つことができる引き出しの多彩さも含まれます。

 

「判断力」

これは、試合中において相手との得点差、残り時間を考慮して有効な動きを実行する現場監督のような視点を持っているかということです。オフボールの動きからデフェンスのつき方、シュートまでにかける時間の使い方など、瞬間ごとの選択を選手は迫られています。ヘッドコーチの持つ俯瞰した視点が選手にも求められます。

 

これらのスキルに関しては全てにおいて向上させることが練習や学習で可能でフィジカルに対して後天的に身に付けられる余地が大きいでしょう。(冴えたパスコースを見つける判断力があってもワンハンドで正確なパスを出すハンドリングが無いと意味がないですよね)

そして、近年NBAでは1試合あたりの平均得点数が約10ポイント以上上昇、3Pショット試投数もほぼ倍に増加ています。

このことが先ほど提示したフィジカルに求められる優先度の変化に関係しています。

まず、3Pと平均得点の上昇の原因には現代のバスケ選手の3P成功率の底上げにあります。

これはインターネットの普及による映像資料へのアクセスのハードルが下がったことやそれに伴って教育レベルの上昇が挙げられます。

このような状況でゲームをした場合、ポジション関係なくタイトなデフェンスをするようになり、コート上のスペースの密度の濃淡のギャップが生じやすくなります。(ディープ3が本格的に戦術に組み込まれたことで高い位置でバックコートの選手がボールをキープするようになったことも要因)

このことで何が起きるのかというと、一人当たりの使えるスペースが広くなり、試合においての1on1の重要度が高くなるとともにピックムーブからアウトナンバーの演出やスイッチングから有利な1on1をチームで演出する動きが増えます。

そうなってくると、試合中のシュートセレクションとしてレイアップ、ローポストからのショットに対してジャンプショット、フローターの割合が増加します。

この10年ほどでいわゆる泥臭いショットから綺麗なショットを演出する戦術がトレンドとなりました。(ヨーロッパ圏の選手や戦術がNBA流入したことなど)

また遠い位置から放たれたショットはリバウンドが比較的大きく跳ねる為、攻守の切り替えが早くなり3Pを打つタイミングは極論2Pの7割の期待値があれば放てばいいわけなのでもし3Pが外れた時、チームとしてどのような選択を取るのかというと試合FG%を上げる為攻撃回数を増やす。

よって攻撃のペースが速くなり現在の状況になったということなのです。

 

これらの状況を踏まえると選手の身体能力として求められるのは、激しい攻守の切り替えに対応できるバネの強さ、空間を高さだけでなく横に支配できる手足の長さ、そしてムービングシチュエーションからのジャンプショットの成功率を高めるために必要な体幹が重要視されるわけです。

 

ここまで書いたことは昔のバスケを知っている人からみた変遷についてなのでこれからバスケを始める若い人からすれば当たり前の状況であり、指導者の立場となる年長者がこれらの事実を踏まえた上で正しく選手を導くことができる状況になれば良いなと個人的には感じています。

ただ、僕の肌感覚では現状、選手と指導者の感覚にはかなりギャップが開いていて日本のバスケ環境はプロリーグでもかなりレベルの低い指導環境です。

日本人はフィジカルでは厳しいのが現実なので、せめてスキルをナショナルレベルまで持っていくことが第一課題だと思います。(選手よりもコーチとしてNBAに日本人が入れるようになることが希望になると思っています)

愚痴ってばっかでもしょうがないので、まとめに移りましょう。

 

かつてのバスケではフィジカルの重要性がスキルに対して高くなっていたが、現代ではスキルの高い選手たちが試合を構造から確変をもたらすまでになった。

セオリーが変わったということですね

それに伴い、選手に求められるフィジカルの性質にも変化が生じていて、ビッグマンと呼ばれる古典的なセンタータイプの選手からコートを端から端へ素早く移動できる手足の長い選手たちが重宝されるようになりました。

また、筋力の鍛え方も安定したジャンプショットが放てるように体幹の重要性も増しました。

1~5のポジションも曖昧になり現代では高い位置から攻撃するバックコート、コーナーやポスト位置から仕掛けるフロントコートという概念が重要になりました。

最後にこれらの用件がよく表れている選手たちの動画をタイプ別に貼っておきますね。

 

オールドスクールアスレチックタイプ

シャキール・オニール

 

ヴィンス・カーター

 

ヤオ・ミン

 

オールドスクールテクニックタイプ

ジェイソン・キッド

 

スティーブ・ナッシュ

 

 

ニューアスレチックタイプ

ヤニス・アンテトクンポ

 

ジョエル・エンビード

 

ニューテクニカルタイプ

ステフィン・カリー

 

トレェ・ヤング

 

ルカ・ダンチッチ